2011/09/07

対照的な北海道と沖縄への観光客と人の流れ

数日前から調査のために石垣に来ています。

今回、石垣には羽田から那覇を経由して石垣入りしました。
そこで、改めて感じたのが、羽田空港と那覇空港での国内観光客のすごい人の列。。。
夏休み最後の時期ということもあってか、大学生っぽい人たちの集団が目立ちました。
彼らの陰に隠れてしまっているせいもあるのでしょうが、ビジネス客や外国人は、
どうやらあまりいなさそう。羽田空港でも、那覇空港でも、沖縄本島でも石垣でも
感じたのですが、沖縄はやはり日本本土の人から人気のある場所であるということ。
今の沖縄は、年中いつ行ってもうざいくらいに本土の観光客で溢れかえっています。

ここであらためて、人々は観光に何を求めるかといえば、それはひとことでいって「非日常」。

つまり、人々が旅に対して求めるのは、普段の生活では目にすることができないような
風景や体験。それゆえに、日本人の多くは、本土とは地理的にも文化的にも気候的にも
異なる沖縄が憧れの観光地となるのでしょうね。そしてまた、沖縄にアジアに通じるものを
求めたり、あるいは見出す日本人もまた多いのです。

逆に、沖縄と同じ国内有数の観光地である北海道は、新千歳空港や新千歳行きの便に
乗れば分かりますが、日本人はビジネス客の姿が目に付くのと、観光客は圧倒的に台湾、
香港、中国、韓国などアジアの人々。

さきほどもいったように、人々が観光に求めるのは「非日常」。
つまり、アジアの人たちにとって北海道が人気の観光地となるのは、
北海道にはこうした国や地域では日常的になかなか体験できない食べ物であったり、
自然や風景であったり、モノがあったりするため。
以前、何かの意識調査で見たことのあるデータでは、台湾をはじめアジアの人々が
日本観光に求めるのは、「食べ物」「買い物」「温泉」「雪」が上位に来るのだそうです。
それと、清潔で整然とした街並み。

私が以前、ある台湾人のブログを見ていたら、その人は北海道に旅行に行ってきた
ようなのですが、富良野の風景がブログのトップページに飾られていて、
なんと北海道を「亜洲的欧洲(アジアのヨーロッパ)」とまで形容していました。
最近は、台湾やマレーシアなどで売られている北海道ガイドブックにもそのような文言が
散りばめられていて、「なるほど、アジアの人たちは北海道にヨーロッパを見出している
のだな。台湾人とかはヨーロッパが好きらしいけど、北海道は同じアジアで気軽に行ける
ヨーロッパというように捉えられているのだな」と感じた次第です。

このようにアジアの人たちにとって北海道が人気のある観光地となっているのですが、
それでは国内観光客に人気のある沖縄については、アジアの人たちは
どのように思っているのでしょうか?

以前、私は数人の台湾人に「沖縄は台湾から近いよね」というようなことを言ったら、
「沖縄はあそこは私たちが求める『日本』じゃない」「えっ?沖縄?あまり興味なーい」と
いったような反応が立て続けに返ってきました。
まあ、台湾人にとって沖縄は風土的に似たようなところですからね。

ならば、「そのチャンスがあるなら沖縄に住んでみたい?」って聞いたら、
それでも彼らは「えーっ」というような感じで、首を横に振ったのです。

観光なら人はそこに「非日常」を求めるから沖縄にはとくに憧れないというのは
分かるんだけど、「住む」「暮らす」となったら、台湾と風土的に近い沖縄だったら
逆にいいんじゃないのというような趣旨のことをいったら、「だって、面白いものが
ないんだもん」「沖縄は田舎で刺激が足りないし何にもない」というような反応が
返ってきました。なるほど、彼ら/彼女らの消費生活に満足できるようなところではない
ということなのでしょうかね。この点、北海道なら、自然もあるけれど札幌のような
全国有数の大都市もあるので、自然も楽しみながら買い物もできますしね。
なるほど、彼ら/彼女らの欲求を満たすわけです。

すでに国が大きく発展して、富裕層や中間層が台頭し、国民の所得水準も向上し、
消費社会化してしまった今の台湾にとっては、風土的に似ているからというような要因
だけにとどまらず、こうした意味においても、とくに若い世代には、沖縄はあまり
魅力的なところとは映らないのでしょう。リゾート地ということなら、台湾人とか
アジアの人たちにとっては沖縄よりもプーケットやバリ島、そしてマレーシアの
コタキナバルなんかの方がずっと人気が高いようなのです。
(ちなみに、不思議なことに、台湾で台湾人向けに募集されている沖縄ツアーの
観光コースには、日本本土の観光客には定番の「海」「リゾート」といった
観光コースはほとんど出てきません。)

一方、単に北海道と沖縄における観光客の多い国・地域の違いだけでなく、
北海道と沖縄では、アジアからの観光客の旅行形態や滞在形態にも違いが
見受けられます。

最近は、北海道で飲料水を目当てに土地を買い占める中国人も増えているし、
アジアからの個人旅行者やリピーターも非常に多い。
沖縄におけるアジアからの観光客は団体旅行客が多いのに対し、
北海道では今ではアジアからの個人観光客が増えています。

このように、沖縄は国内観光客に人気のある観光地または長期滞在先であり、
逆に、北海道はアジアからの人々に人気のある観光地または長期滞在先となって
いるのですが、北海道側としては、沖縄に国内観光客が押し寄せたり移住者が
増えるのを羨ましく思っているようで、逆に沖縄側は、北海道に台湾や中国など
アジアからの観光客が向かうのを羨ましがっているようなのです。
石垣では、「北海道はいいですね。石垣にももっと台湾人観光客が来てほしいと
思っていて、最近、台湾側でプロモーションをやったりもしているんですけど、
どうも北海道が台湾人に人気があるようで。。。」といった“台湾への片思い”の
声がよく聞こえてきます。

どうやら、ないものねだりなのが人の常なのですね。
でも、そうかといって今度は石垣や八重山がもう少し台湾人が「日本」に対して
求める要素を観光で提供すればいいかといえば、それでは石垣や八重山という
地域を日本本土に対して差別化することはできないし(それにまず、そもそも
風土や文化の違いから完全にそうすることは無理)、今度は日本本土の観光客が
減ってしまいかねない。なかなか難しい問題です。